5分でトラウマが抜けた話

私、本業はカウンセラーですが、医者の仕事も多少しております。

企業健診での内科診察です。

 

先日、ある企業さんに行ったときのできごとです。

 

「採血できない男性がいらっしゃるので、お話を聞いていただけませんか」

と、看護師チーフの方が、せっせと診察している私を迎えにきました。

採血の部屋へ行きますと、

つい先ほどお会いした20代の男性が、ベッドに横になって泣いています。

看護師さんの説明では、

彼は子供の頃、釣り針で非常に痛い思いをしたことがあり、

医療用の針を刺されることに強い恐怖があるとのことです。

そのため、ベッドに寝てもらい、看護師ふたりがかりで、

彼ができるだけ恐怖を感じないで済むよう工夫しながら

採血を試みたものの、

ついに泣き出してしまったというのです。

 

ワクチン接種などは受けられるけれども、

腕の内側から採血をされることだけはどうしても無理だとか。

 

診察の順番を待つ方が10人近くいらっしゃいますから、

彼ひとりに長い時間を割くことはできません。

私は、看護師さんに、

「5分だけ時間をください」

と言って、部屋を出てもらいました。

そして、まず彼に、

「先ほど診察でお会いした原です」

と自己紹介をしたのち、こう言いました。

「きょうのところは、採血はやめておいたらいかがですか」

さらに、

「釣り針で大変な思いをなさったんですね。

そりゃあ、怖いですよね。

その恐怖をなくしたいと思いますか」

と聞きますと、涙を流しながら体を震わせている彼が、

「はい」

と小さな声でうなずきました。

「では、ゆったり呼吸していてくださいね」

と言い、軽く手を握り、トラウマの引き抜きを試みたのです。

数分それをしておりますと、

全く力のなかった彼の手に、力がはいってきました。

呼吸も落ち着いてきているのがわかります。

そこでさらに、

「これからは、採血が楽にできるようになりたいですか」

と尋ねました。

泣きやんだ彼の「はい」の答えを確認してから、

引き抜いたトラウマの代わりに、

今後彼が楽な気持ちで採血が受けられるというコマンドを入れました。

 

その間数分、私は目をつぶっていたのですが、

次に目を開けたとき、彼は笑顔になっていました。

 

本当です。

 

「少しは楽になりましたか。

そのうち、『採血してみようかな』という気になりますから、

そしたらまたいらしてください」

 

その企業さんはかなり大きな会社なので、

健診が数週間にわたって実施されています。

ですから、別の日にまた来てもらうことが可能でした。

 

看護師さんには、

「私、魔法かけておいたから大丈夫。

彼、笑顔ですよ」

と申しました。

看護師さんが驚いたことは言うまでもありません。

 

さて、後日談。

彼は、翌週の月曜日に、採血にいらしたとのことです。

そうです、週が明けてさっそく、です。

 

彼が私のサロンのクライアントさんならば、

感想文を書いてもらいたいところ。

 

以上、「掘り下げ技法」の一部を使うことで、

トラウマを解消できたお話でした。

 

ブラボー!

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「静かな樹」は、カウンセリングとヒプノセラピーのサロンです。

どのような考え方に基いてカウンセリングを行っているのかを書いていきたいと思います。

 

毎週月曜日 朝7時、更新予定です。乞うご期待。

平成24年9月30日 (中秋の名月)