M市のKさんへ
2011年7月30日
ほんのちょっとしかお話しする時間のなかったあなたに、
お伝えしたいことがあって書きます。
あなた以外の方にとっても何かのヒントになるはずなので、
私の時間を使ったことを申し訳ないと思わないでくださいね。
何から書いたらよいのでしょう。
とても長くなると思います。
今、あなたは立ち止まっていらっしゃいます。
「自分で考えることができない」とおっしゃいます。
その原因は、体の痛みやつらさからきています。
ただ、このまま相手の出方に任せていていいのでしょうか。
相手は、あなたが根負けするのを待っているのではないでしょうか。
お会いしたときにご提案したように、
あなたは毅然とした態度を取るべきです。
大きな組織は、ときとしてあなたを守ってくれますが、
ときとして壁になって立ちはだかります。
それに圧倒されてしまいそうになる気持ちはわかるのですが、
あなたという人間は、組織よりもはるかに大切な存在だということを
心に留めてください。
組織を笠に着て何か言ってくる人自身も、
組織にとって都合が悪くなったらはじき出されるのです。
組織とはそういうものです。
あなたはやさしくてまじめな方。
きっと、周りに配慮し、自分を律して生きてきたのでしょう。
立派な生き方です。
そういうあなたに、さらに必要なことがあります。
自分を持つこと。自分を尊重すること。
自分とはなんでしょうか。
この体?
いいえ、違います。
体は自分のものではあるけれど、自分そのものではありません。
体をも牛耳っている、自分の本体。
それが、奥の奥にあるのです。
体は傷ついても、本体は決して傷つくことはないのです。
その本体の上に、ひとりひとりの個性が加わります。
あなたが大事にすべきなのは、本体とあなただけの個性です。
他人を大切にと思うならば、まずは自分を大切にすることです。
では、体は大事にしなくてよいのでしょうか。
そんなことはありません。
体は、本体のお宮です。
宇宙遊泳の宇宙服です。
人生という経験を積むために、体は必要なもの。
だから、ほどほどに大切にしてあげるべきなのです。
ほどほどとは。
過保護でもなく、ストイックにいじめ抜くでもなく、ということです。
適度に動かし、適度に栄養を与え、休めてあげる。
楽しみも与えてあげる。
ほどほどに。
今のあなたは体の状態がよくありません。
それは外からの原因によるものなのですが、
ちょっと思い返してみてください。
今まで、体を本当に大切にしてきただろうか、と。
あまり気に留めなかったのではないでしょうか。
「体さん、ごめんなさい。あなたのこと、大好きです。これから大事にするからね」
そう言って、痛いところやつらいところをなでてあげてください。
毎日続けてください。
そのうち、「ごめんなさい」と謝るのは十分だと感じるときがきます。
なんとなく感じます。
そしたら、「あなたのことが大好きです。大事にします」の部分だけを唱え、
なでてあげてください。
今、体が言うことを聞かないせいで、日常生活に制限を受けていると思うなら、
体が言うことを聞かないのではなく、
自分が体を十分に顧みなかったのだと気づいてください。
毅然とした態度を取るべきだということは、お会いしたときにもお話ししました。
その方法についてもご提案しました。
あなたがそれを実行し、相手が速やかに誠意ある対応を取るよう願っています。
しかしながら、もし、あなたがそれを実行しても大きな進展がなかったなら、
あなたにとって、その組織を離れる時期なのかもしれません。
もちろん、決めるのはあなたです。
ただ、私には、あなたが他に行くところがないからそこに留まっているように見えるのです。
「私に能力などあるのでしょうか」
と、あなたはおっしゃいました。
能力がないという判断は、どこからくるのでしょう。
学校の成績ですか?
取り立てて目立たなかったという過去からですか?
誰かから、無難に生きていけばまちがいないと言われたのでしょうか?
組織から痛い目にあわされてまでそこに留まる理由が、
「ほかに行くところがない。自分にはできることがない」
という思いであるならば、人生を引き算で生きていることになります。
それは本当にもったいない。
同じ人生を引き算で生きるか、足し算で生きるか。
どちらが楽しいか。
どちらがイキイキしていられるか。
おわかりですね。
でも、今までそんなこと考えたこともなく、足し算すると言ってもどうしたらよいのかわからない。
そうであれば、まずは自分の個性を減点法ではなく、加点法で捉えることです。
小さくて取るに足らないと思うような良い点を、+1点として足していくのです。
人は、+1点は大したことがないと思って捨ててしまいます。
10点20点でないと+とは言えないと思っているようです。
そうやって捨てていくから、
合計すれば+8点ぐらいあるはずのものをゼロだと思い込むのです。
個性こそが才能だ、とお話ししましたね。
音楽ホールに響き渡るほどの艶のあるソプラノヴォイスが才能ならば、
目の前にひとりにかける、穏やかで優しい声も、才能ではないですか。
あなたにはそれがあります。
ほら、+1点。
いえ、本当はこれなど、+5点ぐらいだと私は思います。
また、あなたの礼儀正しさも、+5点以上の価値がある。
ほかにもたくさんあるはずで、それらはおそらく見逃されているのです。
あなたによって。
自分の良さは、人に認められることも大事だけど、
まずは自分で認めましょう。
それは、天狗になることとは違うのです。
自分の良さや個性を知り、それを才能だと認め、世のため人のために生かす。
これが足し算の生き方です。
こうも申し上げましたね。
人は、今までしてきたことを生かすことばかり考えがちだと。
もしかしたら、全く違う方向に進む道があるかもしれないのに、と。
今までしてきたことがとても好きで、やっていて心からの充実感があるのであれば、
そのままそれを生かせばいい。
もしも、経験があるというただそれだけの理由でその延長線を考えるのであれば、
せっかく岐路に立っていながらチャンスを逃していることになります。
あなたが好きなことはなんですか。
それを生かす方法はないとお考えですか。
経験がない? 仕事になんかなりっこない? 資金がない?
やりようはいくらでもあるはず。
視点を変え、その気になって探せば。
ある人に課せられた責任は、もちろん果たさなければなりません。
養うべき家族がいたら、ちゃんと養う。
継がなくてはいけない家業があるなら、しっかりと継ぐ。
それでもなお、その人が好きなことは絶対にやるべきです。
自分の心を押さえつけないで。
まずは、自分が好きだったことを思い出してみてください。
それにちょっと手をつけてみてください。
すると、
「ああ、この感覚だ。自分が好きだったのは」
と、湧き上がる喜びが感じられるはずです。
そこから何かが見えてくるはずです。
人は、経験や年齢を先に考えます。
それは自分を縛っていくことです。
もうひとつ、肝心なことがあります。
もし、組織を離れるべき時期だと思ったなら、
そのときは、感謝をして離れてください。
現在、組織のあなたへのやりようがどうであろうとも。
今まで自分を育ててくれたことに、心からの感謝を。
うらまないでください。
また、もちろん、あなたが卑屈になる必要もありません。
感謝したとき、今までの経験は自分の肥やしになります。
うらんだら、それは自分を傷つけるものとして返ってくるのです。
感謝して、堂々と次のステップへ進むことです。
しばらくは期限を切らずに心身を休めてはどうかと申し上げました。
期限を切ると、それが気になってしまって十分に休めません。
期限を設けない方が、ゆっくり休めて早く回復するものです。
さっきの加点法で、自分の良いところを探す期間だと考えてはどうでしょう。
今まで見逃してきた、心の中のダイヤモンド。
1カラットのダイヤだけが美しいのではありません。
1カラット未満のダイヤ、
それを数個散りばめた指輪、きれいですよね。
キラキラ輝いているのに見逃されているダイヤの数々。
それが、あなた自身の良さなのです。
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「静かな樹」は、カウンセリングとヒプノセラピーのサロンです。
どのような考え方に基いてカウンセリングを行っているのか、
月に1、2回のペースで書いていきたいと思います。
端的に言えば、「人間の本質は善である」ということ、
そして、「自分を愛してこそ、人を愛せる」
「国を愛してこそ、自分を愛せる」
ということが根底にあります。
また、どんな人生にも意味と目的があるということも伝えたいと思っています。
平成23年2月3日 (旧暦 1月1日)